葬儀については、宗教や宗派により形式やマナーは大きく異なるのが特徴です。仏教・神道・キリスト教・無宗教など、日本では信仰にもとづくさまざまな葬儀が行われています。本記事では、宗教別葬儀の割合や特徴、宗教や宗派の調べ方について解説します。この記事を参考に適切な知識と準備で、故人を敬う葬儀を確実に執り行いましょう。
日本の宗教別葬儀の割合
葬儀は故人や遺族が信仰する宗教や宗派にもとづいて行われます。ここでは、日本における宗教別に見た葬儀の割合について解説します。仏教葬の普及率
日本で最も普及している葬儀形式は仏教式で、全体の約90%を占めています。さらに仏教には、浄土真宗や曹洞宗など宗派による違いが存在し、焼香や戒名の授与を行うのが特徴です。とくに、浄土真宗では、葬儀は故人との別れのためではなく、阿弥陀如来への感謝を表すために行う勤行と位置づけられているため、本尊への礼拝を重視する傾向にあります。仏教葬においては、都市部では家族葬が増加していることから簡素な形式も多く見られ、地方では寺院とのつながりが強く、伝統的な仏教葬が根強く残っています。
神道・キリスト教・そのほかの普及率
日本で行われている葬儀のうち、神道(神葬祭)が約5%、キリスト教は約1%と仏教に比べ少数となっており、それぞれ独自の葬儀形式が特徴です。神道では、玉串(榊(さかき)の枝に紙垂(しで)と呼ばれる紙片を付けたもの)を祭壇に捧げる玉串奉奠(たまぐしほうてん)、キリスト教では、故人に直接花を捧げる儀式として「献花」が行われます。そのほかに、無宗教や新興宗教の葬儀も約4%執り行われており、音楽葬や自然葬など自由な形式が選ばれる傾向にあります。各宗教の葬儀の特徴
僧侶による読経や焼香、合掌などの儀式は、すべて仏教の教えにもとづくものであり、すべての宗教葬で行われているわけではありません。ここでは、各宗教における葬儀の特徴を紹介します。仏教葬儀の特徴
仏教葬儀では、通夜・葬儀・告別式・火葬の流れが一般的となっています。とくに、浄土真宗では「往生即成仏」の教えから、四十九日法要や一周忌、三回忌といった法要のみを行い、その後の法要やお墓参りなどの「追善供養」は行わないのが特徴です。焼香は宗派により回数が異なり、曹洞宗は2回、本願寺派の浄土真宗は1回など、宗派ごとに細かく定められています。また、香典の表書きは「御霊前」が一般的であるものの、浄土真宗では「御仏前」と記載します。服装は黒の喪服で、男性は黒ネクタイ、女性は黒ワンピースが基本です。
神道葬儀(神葬祭)の特徴
神道の葬儀は「神葬祭」と呼ばれ、神道では死を穢れ(けがれ)ととらえることから、穢れを清める儀式が中心となります。神葬祭は、通夜祭・葬場祭・火葬祭の順に進行し、玉串奉奠で故人を偲びます。神葬祭に参列する際には、香典袋に玉串料を包み、表書きは「玉串料」もしくは「御神前」と記載するのが一般的です。服装は仏教と同様に黒の喪服ですが、白足袋が推奨される場合もあります。
キリスト教葬儀の特徴
キリスト教の葬儀は、カトリックとプロテスタントで異なり、教会で執り行われるのが一般的です。 カトリックの儀式はミサ、プロテスタントは礼拝が中心で、焼香の代わりに献花を行います。香典袋に御花料(おはなりょう)を包み、表書きには「御花料(おはなりょう)」と記載、水引は必要ありません。服装は黒の礼服になりますが、プロテスタントでは簡素な服装でも許容される場合があります。
多様化する無宗教葬の特徴
無宗教葬は宗教的儀式を省き、故人や遺族の希望にもとづく自由な形式が特徴の葬儀です。葬儀内容を自由に決められる点が無宗教葬のメリットであるため、音楽葬や自然葬、偲ぶ会など葬儀の形式は多岐にわたります。香典には「御霊前」「御香典」「御花料」などと記載され、宗教とは関係のない表記を用いることがむしろマナーです。服装も黒を基調としつつも、カジュアルな服装が許容される場合も多くあります。無宗教葬は柔軟性が高く、現代的な葬儀の選択肢として増加しています。
宗教・宗派の調べ方は?
故人の宗教や宗派が分からないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。宗教や宗派を正しく把握していないと、本来とは異なる宗派の形式で葬儀をあげてしまう可能性すらあります。ここでは、宗教や宗派の調べ方について解説します。信仰を調べる方法
故人の宗教や宗派を知るには、まず遺言や生前の会話から手がかりを探しましょう。仏教の場合であれば、菩提寺や戒名記録、過去帳のチェック、神道であれば神棚や氏神の記録、キリスト教であれば教会の所属を調べます。また、親族への聞き取りも有効で、とくに高齢者に尋ねると詳細が判明する場合も多くあります。菩提寺や教会に問い合わせ
菩提寺や教会が分かれば、直接問い合わせることで、宗派や葬儀形式の確認が可能です。仏教であれば寺院に戒名や過去の法要記録を問い合わせ、神道であれば氏神神社や神職に相談、キリスト教であれば教会の牧師や神父に連絡することで、細かい宗派や葬儀形式の情報が得られます。また、事前に連絡を取ることで、葬儀の形式やマナーを知り、適切な準備の把握や見積もりもしやすくなり、ミスや認識の相違を防止できます。
葬儀社に相談する
宗教や宗派が不明な場合には、葬儀社に相談すると菩提寺や教会への連絡を代行し、必要な調査や手配を行ってくれる場合があります。葬儀社に相談することで、故人の宗教や宗派が判明し、それに応じて適切な形式を提案してもらえます。とくに把握すべきポイントは、表書きのマナー、焼香や献花の方法、僧侶や神職の手配方法、葬儀の費用相場などです。葬儀社に相談し、形式を知ったうえで、さまざまな段取りをクリアしていくことでスムーズな葬儀が実現します。